みんしゅしゅぎ ってなんだ
「選挙で意見を示しても、工事は止まらない。
だからこうして座り込むんです。
迷惑だという声もあるけれど、
だけど他にできることがない。
他に工事を止める方法があるなら教えてほしいんです。」
その日の辺野古は大雨が降っていて、
傘をさしていても濡れてしまうような天気だった。
辺野古の米軍基地、キャンプシュワブ。
僕がそこについた時には、もうすでに多くの人が集まっていた。
多くの人が年配のおじいさん、おばあさん。
中には県外からきた中高年の人。
そして報道関係者。海外のジャーナリスト。
毎日3回。
ダンプカーが工事現場に入るのを遅らせるために、
辺野古移設に反対している人たちが座り込みをしている。
座り込みで遅らせられるのは、およそ10~15分ほどだろう。
たったその数分にでも、身体を張って工事を止めようとするのは、
選挙で辺野古移設反対が過半数を超えても、工事が止まらないから。
工事車両がやってくると、
黒い服にサングラスをした機動隊が抗議者を囲んでいく。
「警告します。
皆さんが立っている場所、座り込んでいる場所は道路上です。
歩道に移動してください。道路をふさぐ行為は道路交通法に違反しています。」
メガホンを通して抗議者への警告が響く。
そして合図とともに機動隊による抗議者の排除が始まる。
座り込んでいた人を一人ひとり抱きかかえ、入り口を確保すると
大きなダンプカーが次々と基地内に入っていく。
その姿に「基地反対」のプラカードを掲げる。
こうした座り込みの行為には、
「座り込みは道路交通法違反だ!迷惑だ!」
という苦情が入る。
だけど、その法律ができたのも、
この国のルールである憲法があるからであって
その憲法で定められた国民主権がないがしろにされているから戦っている。
沖縄の声に寄り添うと、確かに政治家は言った。
それなのに、沖縄の声は無視され、工事は続けられる。
だからこそ止まらないと分かっていても、
こんな大雨の日も、抗議する人たちがいる。
なぜこの人たちは傷つかなければいけないんだろう
なぜ国防のために、この人たちの守りたいものを傷つけないといけないんだろう
そしてなぜこの行為を僕はただ黙って傍観することしかできないんだろう
民主主義ってなんだろう。
そんな答えのない問いが心に残る。
2014年11月に翁長さんが県知事に当選してから今日まで、
沖縄ではオール沖縄(辺野古に新基地を造らせないオール沖縄会議)という政党が与党として県議会を運営している。
今年の9月の県知事選挙でも、
翁長元県知事の意思を継ぐ玉城デニーさんが当選。(過去最多得票数での当選だった)
そんなオール沖縄が掲げているポリシーは大きく2つだ。
ひとつは、オスプレイの配備撤回。
そしてふたつ目が、普天間基地の県内移設(辺野古新基地)の反対。
(ネットではまるでオール沖縄が、
沖縄からの基地全廃を掲げているようなミスリードをした意見もあるが、
普天間基地は沖縄の米軍基地のおよそ6%だ。)
デニーさんの当選によって引き続き、
「辺野古移設は反対」という沖縄県民の民意は示された。
それにも関わらず、
工事は止まらない。
「こどものとうひょう おとなのせんきょ」という本に、こんな文章がある。
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みんしゅしゅぎは、いい ことを
みんなで きめるんだよな。
かずが おおいから、いいんじゃなくて、
たとえ、ひとりでも いい かんがえなら、
みんなで だいじにするのが、
みんしゅしゅぎの いい ところだろ。
それをまちがえると、かずが おおい やつが、
かってに いばったり、わるい ことを
しだすんだよな。
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この国の民主主義ってなんだ。
まるで答えありきで進められていくこの社会に
僕たちはどう向き合っていくのだろう。
社会を作っているのは政治家でもなく、権力者でもなく
この社会に生きる僕たち一人ひとりだ。
沈黙することはマジョリティへの加担にしかならない。
まずは自分の意見を持つ人を増やすことが自分のすべきことだと、
そうはわかっていても
刻一刻と進んでいく社会の問題を前に、
無力さを感じずにはいられない。
全ての人に平和な朝を届けられる日がきますように。
僕はそのために残りの人生で何ができるだろう。
(了)
廣瀬 智之(ひろせ ともゆき)
社会問題の解決を他人任せにしない世界へ。#新卒で社会起業家 に挑戦中。元開発メディアganas記者。「日本の社会・政治参加意識を高めるメディア事業」立ち上げ中です。
私立・公立高校やイベントで講演の依頼をいただいています。
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