途上国で暮らした僕が「国際理解教育」を通して、日本の子どもたちに伝えたいこと
これまでアジアや大洋州の開発途上国を旅し、
そこで生きる人たちの写真を撮りながら、ともに暮してきました。
今では僕の活動を知ってくださった学校の先生方から、
国際理解教育の一環として学校に呼んでくださるようになりました。
今回の記事は僕がいつもどのような授業をしているのかを、
少しだけお伝えできればと思います。
途上国の「暗い面」から学ぶこと
授業は大きく分けて、途上国の暗い面と明るい面双方から私たちが学べることを伝えています。
まずは「暗い面」。どのようなことを伝えているかをご紹介します。
1.キリバスから学ぶ、社会問題と日本人の関係
30年後は海に沈んでいるかもしれない。
そんな予測もされている南太平洋に位置する「キリバス」。
キリバスは気候変動による海面上昇の影響を受けています。
気候変動を引き起こしている要因の一つに、「温室効果ガスの過剰排出」があります。
世界的にも有数の経済大国である日本も切っても切れないこの問題。
私たちの豊かな暮らしが、遠く離れたキリバスの国を奪おうとしているとも言えます。
私たちの社会は思っているより、グローバルなものになっています。
私たちが着ている服をみても、
食べ物を見ても、外国から輸入しているもので溢れています。
知らない間に私たちの暮らしは諸外国と結びついているのです。
その経済活動の裏で、引き起こされている社会問題はたくさんあります。
世界で起きている問題も、他人事ではない。
そんなことを感じてもらうために、キリバスのお話をしています。
2.ルワンダから学ぶ、大量虐殺と差別の問題
1994年。ルワンダで大量虐殺が起きました。
100日間で80万人のツチ族が殺されてしまったのです。
私は虐殺があった跡地に足を運びました。
ここで注目すべき点は、大量虐殺はいきなり起きるものではなく、
すべては差別偏見から始まっているという点です。
それが「ヘイトのピラミッド」と呼ばれる概念。
大量虐殺と聞くと、日本は無関係と思われがちですが、
日本にもたくさんの差別や偏見があります。
自分たちの暮らしに存在する「差別」をほっといてはいけない。
そんな社会的な正義について学んでもらっています。
3.カンボジアの地雷から学ぶ、戦争が後世に遺すもの
カンボジアは1970年から1993年まで続いた内戦の影響で、
今もなお推定400万個~600万個の地雷が埋まっています。
実際に地雷原の現場にも足を運んでいます。
内戦が終わり、一見復興したかのように見えるカンボジアですが、
まだ内戦の負の遺産は残り続けています。
地雷原に生きる人たちの姿を知ることで、
戦争が後世に何を残すのかを知ってもらいたいと考えています。
途上国の「明るい面」から学ぶこと
次に途上国の明るい面から学べることです。
途上国と聞くとどうしてもマイナスなイメージを持たれがちですが、
日本人が途上国から学べることはたくさんあります。
その一部を紹介していきます。
1.ウガンダから学ぶ「見知らぬ人を助ける文化」
皆さんは過去一か月の間に、見知らぬ困っている人を助けましたか?
この質問は、世界139カ国で実施されている
「世界寄付指数ランキング」の質問項目の一つです。
2017年版ではウガンダが世界第8位にランクイン。
世界で8番目に「見知らぬ人を助けているのが多い国」になりました。
一方、同調査で日本が何位なのか、皆さんはご存知でしょうか?
日本の順位は139カ国中、135位。
見知らぬ人を助けたのはわずか23%にとどまりました。
この調査を、視覚的に面白く伝えるために、
ウガンダで取材映像を作成しています。
「日本人は親切で優しい」。
そんな通説のある今、改めて自分たちの暮らしを見つめなおすきかっけにしてもらいたく、この映像を見せています。
特に都市部では、人の繋がりが希薄化し、
誰か知らない人に頼るということが少なくなってきているのではないでしょうか?
本当に日本が見知らぬ人に冷たい国なのか?と問われれば、
僕はあまりそうは思っていませんが、
自分の持っている常識を疑うことに意味があると考えています。
2.フィジーから学ぶ、幸せの価値観
皆さんにとって幸せとは何ですか?
そう聞かれて、あなたはすぐに答えられますか?
同じ質問を南太平洋に浮かぶ小国、「フィジー」で、
100人にインタビューしました。
なぜフィジーなのか?
実はフィジーは世界幸福度調査でこれまで何度も1位を獲得している「幸せ先進国」だったのです。
そこでインタビュー調査をしたら、どんな結果がでると思いますか?
もっとも多かった回答が「家族」。
そして実に61人のもの人が、「人」に関する回答をしました。
さらにお金やモノに関する回答をした人は一人もいなかったのです。
同調査で日本は世界18位。
このことには驚く生徒が多いようで、
授業後にいただくレポートにはいつもフィジーの動画に関する感想を多くいただきます。
この動画を見せるのは、ウガンダと同じく、
当たり前を疑ってほしいという想いからです。
日本の子どもたちは想像以上に何かに縛られています。
そして「こう生きなければいけない」という見えない社会の重圧がかかっています。
でも本当は価値観なんて多種多様なものであって、
ふと外(外国)を除けば、フィジーのような身近な幸せを本気で大切にしている人たちもいるわけです。
人の数だけ価値観があって、人の数だけ幸せがある。
そのことを知ってもらうためにも、日本では得られにくい気付きを与える必要があります。
まとめ
日本のここがすごい!日本人は世界的にも優秀だ!
日本の技術や文化は優れている!
こういった言葉をテレビやネットで頻繁に見るようになったのは、
いつ頃からでしょうか?
もちろん僕も日本が好きだし、
日本の文化や日本人は素晴らしいところをたくさん持っていることは知っています。
でもそれは、「日本は」ではなく、「日本も」。
日本も素晴らしい国であるし、
一方で世界にも素晴らしい国で溢れていることを忘れてはいけません。
他国との違いを優劣で測るのではなく、
互いの違いを認め合い、尊重し合うことが求められます。
途上国というワードはどうしても「貧困」や「紛争」などの暗い面を想像させてしまいます。
もちろん途上国の抱えている問題に目を向けることも大切ですが、
それと同時に途上国から学べることにも目を向けてほしい、それが僕の想いです。
決して先進国が上で、途上国が下の関係ではありません。
そのことを理解してもらうために、「暗い面」と「明るい面」双方にフォーカスを充てて、授業をしています。
ご依頼があれば、学校に伺いますのでお気軽にご連絡ください。
今回はここまで
(了)
廣瀬 智之(ひろせ ともゆき)
社会問題の解決を他人任せにしない世界へ。#新卒で社会起業家 に挑戦中。元開発メディアganas記者。「日本の社会・政治参加意識を高めるメディア事業」立ち上げ中です。
▼廣瀬智之ってどんな人?
私立・公立高校やイベントで講演の依頼をいただいています。
これまでの取材写真や動画を用いて、社会問題、国際理解の講演を承っています。
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