誰にでも社会は変えられる?市民が社会を変えてきた5つの事例
社会は誰にでも変えることができる―――
そういっても日本ではあまりピンとこない人が多いかもしれません。
しかし世界を見渡した時に、他の誰でもなく「市民」が社会を変えてきた事例は数多く存在します。
今回はそんな世界の事例を紹介していきたいと思います。
公民権運動(アメリカ)
“I have a dream.”
日本人でも一度は聞いたことがある、このフレーズ。
キング牧師のスピーチで用いられたこの言葉。
事の発端は1955年12月1日。
アラバマ州モントゴメリーで、黒人女性のローザ・パークスが
公営バスの「黒人専用席」に座っていました。
白人がパークスに席を譲るように言いましたが、譲らなかったため
白人の運転手が席を譲るよう命じました。しかしパークスがこれを拒否。
その後、人種分離法違反で警察官に逮捕され投獄、後に罰金刑を宣告される事件が起きました。
この事件をきっかけに、キング牧師らが中心に、 反人種差別運動を展開。
1963年には、人種差別の撤廃を求める20万人による「ワシントン大行進」が起きました。
この一連の運動により、アメリカ政府は1964年に公民権法を制定。
アメリカにおける法の下での人種差別に終止符が打たれました。
MeToo(世界)
引用:【国際】セクハラ・性的暴行被害告発「Me Tooキャンペーン」、世界的に拡大。大臣も辞任 | Sustainable Japan
日本にも広がりを見せたMeToo運動。
2017年に、アメリカ芸能界でセクハラの告発が続きました。
アメリカの女優、アリッサ・ミラノが同様に性的な被害を受けた人に告発と連帯を呼びかけ、
これに多くの著名人や、一般人が呼応する形で運動は世界に広がりを見せました。
日本ではジャーナリストの伊藤詩織さんが、自身の元TBSワシントン市局長に受けた準強姦被害を告白。
国際的にも取り上げられる大きな事件に発展。
社会の中に埋もれていたセクハラや望まない性行為を可視化することに繋がりました。
労働革命(アイスランド)
引用:日本と正反対。個人が社会を変えられると信じている「アイスランド国民」が起こした21世紀の“労働革命”。 - Be inspired!
こちらは社会を変えようと立ち上がった、少し変わった事例の紹介。
2016年10月24日、午後2時38分。
アイスランドのオフィスで一斉に女性が退社し始めました。
実はこの行動は、女性たちが自らの権利を求めて行ったデモ活動の一つ。
アイスランドにおける女性の社会的地位は男性よりも低く(とはいってもアイスランドは2016年の男女平等ランキングにおいて世界第1位)、
同じ仕事をしていても、男性が得る賃金より女性が得る賃金が29.7%低いことへの抗議活動です。
女性たちはSNSによって呼びかけられた各地域の広場に集まり、プラカードを持って男女平等を訴えました。
なぜ午後2時38分なのか。
それは賃金の男女格差である29.7%を8時間労働に当てはめると、
女性は午後2時38分以降は毎日タダ働きしているからだそうです。
このデモ活動は全国規模で行われ、多くの女性たちが参加しました。
朴槿恵元大統領、退陣を求めるデモ(韓国)
当時韓国の朴槿恵大統領は、知人女性・崔順実(チェ・スンシル)氏と、
財団を巡る不正などの疑惑を指摘され、
11月29日に「進退を国会に任せる」と談話を発表しました。
その後12月3日、国会に朴槿恵大統領の弾劾訴追案が提出されます。
可決には定数300の内、3分の2にあたる200が必要でした。
これには与党から最低29人の同調者が必要。
12月9日の採決の前に、民意を示す必要があると、韓国の人々は立ち上がりました。
「ろうそく集会」と称された抗議活動は、崔順実氏の疑惑が浮上した直後から始まっていましたが、
当初の参加者は3万人ほどと小規模でした。
しかしその後参加者は急速に膨れ上がり、2週間後には100万人を記録。
そして12月3日の集会では、なんと午後9時30分時点でソウル約170万人、全国で約232万人が参加したと発表されました。
そして国会採決では与党所属の議員までが世論に押され賛成に回ったと分析されています。
集会に加わった市民たちが朴氏を大統領から引きずり下ろした結果となりました。
性犯罪刑法の改正(日本)
引用:刑法の性犯罪規定はなぜ110年ぶりに抜本改正されたのか —— 「運動のスタートアップ」に学ぶ | BUSINESS INSIDER JAPAN
最後に我らが日本の事例。
2017年に、性犯罪刑法が改正されました。
性犯罪刑法が改正されたのは実に110年ぶり。
改正を後押ししたのは「ちゃぶ台返し女子アクション」を含む、近年設立された4団体です。
刑法の性犯罪規定の問題を指摘する声はこれまでに何度も上がっていましたが、
大幅に改正されたことはありませんでした。
そんな中、改正の機運が高まったのは、
2014年9月3日に松島みどり衆院議員(自民党)が法務大臣就任会見で、
「強姦罪の法定刑が懲役3年以上で、強盗が懲役5年以上はおかしい」と見直しを求める発言をしたことです。
これを受け、法務省で性犯罪刑法の見直しのため、 関係者にヒアリングが実施されましたが、
取りまとめられた内容は、性暴力の実態を十分に考慮したものでもなかったといいます。
そのことに危機感を感じた4団体は、
2016年9月から共同で「ビリーブ・キャンペーン」を展開し、
5万4000人超の署名を集めて、国会議員45人と面会。
今年6月の改正案可決を大きく後押ししました。
社会や政治に参加しない日本人
これまで 市民が社会を変えてきた事例を紹介してきましたが、
実は日本は、社会や政治に参加する人が世界と比べると、極端に少ないことをご存知でしょうか?
例えば選挙の投票率。
皆さんは欠かさず選挙に行っていますか?
下のグラフは衆議院選挙における年代別の投票率の推移を示しています。
昨年の衆議院議員選挙の投票率は53.68%と、およそ2人に1人しか選挙に行っていない状況にあります。
ちなみにこれは戦後2番目に低い数値とされています。
引用:明るい選挙推進協会
一方で、欧米諸国はどうでしょうか?
こちらが北欧のスウェーデンとの投票率の比較です。
全年齢の投票率は80%超え。
日本と大きく差が開いていることが分かります。
また選挙以外の社会的な活動を見ても、
参加する人の割合は極めて少ない状況にあります。
引用:低下する日本人の政治的・社会的活動意欲とその背景、NHK
確かに社会を変えることは、簡単なことではありません。
しかしながら日本も民主主義国家であり、主権は私たち国民にあります。
そして民主主義において大切なことは、
市民が主体的に政治や社会に参加することです。
一人ひとりの力は小さいかもしれませんが、
今回紹介したように、みんなの力を合わせることが、社会を変えることにつながります。
自分たちの手によって、理想の社会を作っていく。それこそが民主主義国家で生きる私たちの持っている権利ではないでしょうか?
それを生かすも殺すも私たち次第です。
(了)
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