Tomoyuki Hirose Journal

#新卒で社会起業家に挑戦中

誰にでも社会は変えられる?市民が社会を変えてきた5つの事例

社会は誰にでも変えることができる―――

 

そういっても日本ではあまりピンとこない人が多いかもしれません。

しかし世界を見渡した時に、他の誰でもなく「市民」が社会を変えてきた事例は数多く存在します。

 

今回はそんな世界の事例を紹介していきたいと思います。

 

 

公民権運動(アメリカ)

 

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引用:We Shall Overcome 勝利を我らに ピート・シーガー Pete Seeger プロテストソング・トピカルソングの傑作集 公民権運動 ジョーン・バエズ Joan Baez ブルース・スプリングスティーン Bruce Springsteen もカバー。

 

“I have a dream.”

 

日本人でも一度は聞いたことがある、このフレーズ。

キング牧師のスピーチで用いられたこの言葉。

 

事の発端は1955年12月1日。

 

アラバマ州モントゴメリーで、黒人女性のローザ・パークスが

公営バスの「黒人専用席」に座っていました。

 

白人がパークスに席を譲るように言いましたが、譲らなかったため

白人の運転手が席を譲るよう命じました。しかしパークスがこれを拒否。

 

その後、人種分離法違反で警察官に逮捕され投獄、後に罰金刑を宣告される事件が起きました。

 

この事件をきっかけに、キング牧師らが中心に、 反人種差別運動を展開。

 

1963年には、人種差別の撤廃を求める20万人による「ワシントン大行進」が起きました。

 

この一連の運動により、アメリカ政府は1964年に公民権法を制定。

 

アメリカにおける法の下での人種差別に終止符が打たれました。

MeToo(世界)

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 引用:【国際】セクハラ・性的暴行被害告発「Me Tooキャンペーン」、世界的に拡大。大臣も辞任 | Sustainable Japan

 

日本にも広がりを見せたMeToo運動。

 

2017年に、アメリカ芸能界でセクハラの告発が続きました。

アメリカの女優、アリッサ・ミラノが同様に性的な被害を受けた人に告発と連帯を呼びかけ、

 

これに多くの著名人や、一般人が呼応する形で運動は世界に広がりを見せました。

 

日本ではジャーナリストの伊藤詩織さんが、自身の元TBSワシントン市局長に受けた準強姦被害を告白。

 

国際的にも取り上げられる大きな事件に発展。

社会の中に埋もれていたセクハラや望まない性行為を可視化することに繋がりました。 

 

労働革命(アイスランド)

 

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引用:日本と正反対。個人が社会を変えられると信じている「アイスランド国民」が起こした21世紀の“労働革命”。 - Be inspired!

 

 

こちらは社会を変えようと立ち上がった、少し変わった事例の紹介。

 

2016年10月24日、午後2時38分。

アイスランドのオフィスで一斉に女性が退社し始めました。

 

実はこの行動は、女性たちが自らの権利を求めて行ったデモ活動の一つ。

 

アイスランドにおける女性の社会的地位は男性よりも低く(とはいってもアイスランドは2016年の男女平等ランキングにおいて世界第1位)、

 

同じ仕事をしていても、男性が得る賃金より女性が得る賃金が29.7%低いことへの抗議活動です。

 

女性たちはSNSによって呼びかけられた各地域の広場に集まり、プラカードを持って男女平等を訴えました。

 

なぜ午後2時38分なのか。

 

それは賃金の男女格差である29.7%を8時間労働に当てはめると、

女性は午後2時38分以降は毎日タダ働きしているからだそうです。

 

このデモ活動は全国規模で行われ、多くの女性たちが参加しました。

 

朴槿恵元大統領、退陣を求めるデモ(韓国)

当時韓国の朴槿恵大統領は、知人女性・崔順実(チェ・スンシル)氏と、

財団を巡る不正などの疑惑を指摘され、

11月29日に「進退を国会に任せる」と談話を発表しました。

 

その後12月3日、国会に朴槿恵大統領の弾劾訴追案が提出されます。

 

可決には定数300の内、3分の2にあたる200が必要でした。

これには与党から最低29人の同調者が必要。

 

12月9日の採決の前に、民意を示す必要があると、韓国の人々は立ち上がりました。

 

「ろうそく集会」と称された抗議活動は、崔順実氏の疑惑が浮上した直後から始まっていましたが、

当初の参加者は3万人ほどと小規模でした。

 

しかしその後参加者は急速に膨れ上がり、2週間後には100万人を記録。

そして12月3日の集会では、なんと午後9時30分時点でソウル約170万人、全国で約232万人が参加したと発表されました。

 

そして国会採決では与党所属の議員までが世論に押され賛成に回ったと分析されています。

 

集会に加わった市民たちが朴氏を大統領から引きずり下ろした結果となりました。

 

性犯罪刑法の改正(日本)

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引用:刑法の性犯罪規定はなぜ110年ぶりに抜本改正されたのか —— 「運動のスタートアップ」に学ぶ | BUSINESS INSIDER JAPAN

 

最後に我らが日本の事例。

 

2017年に、性犯罪刑法が改正されました。

性犯罪刑法が改正されたのは実に110年ぶり。

 

改正を後押ししたのは「ちゃぶ台返し女子アクション」を含む、近年設立された4団体です。

刑法の性犯罪規定の問題を指摘する声はこれまでに何度も上がっていましたが、

大幅に改正されたことはありませんでした。

 

そんな中、改正の機運が高まったのは、

2014年9月3日に松島みどり衆院議員(自民党)が法務大臣就任会見で、

「強姦罪の法定刑が懲役3年以上で、強盗が懲役5年以上はおかしい」と見直しを求める発言をしたことです。

 

これを受け、法務省で性犯罪刑法の見直しのため、 関係者にヒアリングが実施されましたが、

取りまとめられた内容は、性暴力の実態を十分に考慮したものでもなかったといいます。

 

そのことに危機感を感じた4団体は、

2016年9月から共同で「ビリーブ・キャンペーン」を展開し、

5万4000人超の署名を集めて、国会議員45人と面会。

 

今年6月の改正案可決を大きく後押ししました。

 

社会や政治に参加しない日本人

 

これまで 市民が社会を変えてきた事例を紹介してきましたが、

実は日本は、社会や政治に参加する人が世界と比べると、極端に少ないことをご存知でしょうか?

 

例えば選挙の投票率。

 

皆さんは欠かさず選挙に行っていますか?

 

下のグラフは衆議院選挙における年代別の投票率の推移を示しています。

 

昨年の衆議院議員選挙の投票率は53.68%と、およそ2人に1人しか選挙に行っていない状況にあります。

 

ちなみにこれは戦後2番目に低い数値とされています。

 

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引用:明るい選挙推進協会 

 

一方で、欧米諸国はどうでしょうか?

 

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こちらが北欧のスウェーデンとの投票率の比較です。

全年齢の投票率は80%超え。

 

日本と大きく差が開いていることが分かります。

 

また選挙以外の社会的な活動を見ても、

参加する人の割合は極めて少ない状況にあります。

 

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引用:低下する日本人の政治的・社会的活動意欲とその背景、NHK

 

確かに社会を変えることは、簡単なことではありません。

しかしながら日本も民主主義国家であり、主権は私たち国民にあります。

 

そして民主主義において大切なことは、

市民が主体的に政治や社会に参加することです。

 

一人ひとりの力は小さいかもしれませんが、

今回紹介したように、みんなの力を合わせることが、社会を変えることにつながります。

 

自分たちの手によって、理想の社会を作っていく。それこそが民主主義国家で生きる私たちの持っている権利ではないでしょうか?

 

それを生かすも殺すも私たち次第です。

 

(了)

 

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廣瀬 智之(ひろせ ともゆき)
社会問題の解決を他人任せにしない世界へ。#新卒で社会起業家 に挑戦中。元開発メディアganas記者。「日本の社会・政治参加意識を高めるメディア事業」立ち上げ中です。
 
私立・公立高校やイベントで講演の依頼をいただいています。
これまでの取材写真や動画を用いて、社会問題、国際理解の講演を承っています。
 

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講演依頼はこちらから

 

 

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報道写真家志望だった僕がソーシャルビジネスを立ち上げるわけ

はじめまして!廣瀬智之です。

 

今年の春に関西の大学を卒業し、

「社会問題の解決を他人任せにしない世界」を作るためのソーシャルビジネスを立ち上げ中です。

 

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廣瀬智之とは一体何をしている人なのか、

しっかりと説明できるよういしておきたい!と考え、

自分のブログで簡潔にまとめようと思います。

 

 

「知るだけでは世界は変わらない」、報道活動で感じた課題

 

もともと社会問題に関心があり、

解決のために自分ができることをやっていきたいという想いは持っていました。 

 

大学生の間に、国際ボランティアをしたり、タイダイ染めのブランドをカンボジアでやってみたりと、様々な手段にトライしていましたが、

 

その中でも、最も力を注いだのが「報道写真家」としての活動です。

 

キッカケとなったのは、フォトジャーナリストの安田菜津紀さんを知ったこと。

 

安田さんの著書を読み、自分のするべきことはこれだ!と思い立ち、

気がつけば東京に安田さんに会いに行っていました。

 

そんなきっかけとなった安田さんに紹介してもらった取材地、

カンボジアの地雷原が僕の初めての取材地でした。

 

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それからはカンボジアやフィリピンなどの東南アジアを中心に取材活動を続けていました。

 

日本には届いていないような、社会の影に光を当てる報道写真家という仕事にやりがいを感じていましたし、

 

何より先輩報道写真家の社会問題と向き合い続ける姿勢に惚れ、

自分もそんな人になりたいと考えていました。

 

そんな報道写真家としての活動を振り返るキッカケをくれたのは、

南太平洋に浮かぶ、とある小国に取材に行ったことがきっかけです。

 

気候変動で海に沈む「キリバス」という国へ

 

2016年11月に、僕は南太平洋に浮かぶ「キリバス」という国へ行きました。

 

キリバスは気候変動の影響を大きく受けているといわれる国で、

早ければ30年以内に居住ができなくなるかもしれないとの調査結果も出ています。

 

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満潮で浸水した村で遊ぶ子どもたちーキリバス、タラワ(写真 廣瀬智之)

 

多くの人が知っているかと思いますが、

気候変動は私たち日本人も無関係ではいられない問題です。

 

気候変動を引き起こす原因の一つに、過度な経済活動による温室効果ガスの排出があります。

 

つまり経済大国である私たちの暮らしが、

遠く南太平洋に浮かぶ小国を奪おうとしている状況とも言えます。

 

「キリバスで起きていることを知りたい」。

そう考えた僕は、実際にキリバスに暮らしながら、政府機関に取材をしました。

 

www.ganas.or.jp

 

キリバスに生きる人の声を聞き、

どうにかこの国で起きていることを多くの人に知って欲しいと思いましたが、

 

その時僕は、「伝える」ことだけで、

この問題を解決するイメージがどうしても持てなかったのです。

 

報道写真の役割は、あくまでもその問題を認知させること。

認知した人が、意識や行動を変え、問題解決に関わることで、

初めて社会は変わると考えます。

 

 ですが、ただキリバスで起きている問題を伝えても、

縁もゆかりもない日本の人たちが、南太平洋の小国のために行動を変えるというのは、

かなり難しいことだと感じました。

 

つまりは「知る」だけでは社会は変わらない。

 

報道写真の活動をしていたものとして、そんなことを考えるのは一種の諦めともとれるかもしれませんが、僕にはもっと有効な手段があると思わざるを得ませんでした。

 

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満潮時にじわりじわりと海水がしみてくる村もあるーキリバス、タラワ(写真 廣瀬智之)

 

報道写真家になることをやめ、社会起業家へ。

 

 「知る」だけでは社会は変わりません。

とはいえ、すべては知ることから始まるというのも事実です。

 

しかしながら、今どれくらいの人が、

社会で起きていることを知っているでしょうか?

 

日本にも社会問題や戦争の現場に足を運び、

そのリアルな実情を伝えてくれているジャーナリストの人たちがいますし、

報道の世界では、高い評価を受けている人も少なくありません。

 

しかしながら、それだけ実力のある人でも、

その声は情報過多なこの時代では届いていないのです。

 

あまりにも社会や政治、この国で起きていることを知らない人が多い。

いくら価値のある情報を発信しても、知ってさえもらえない。

 

この状況に気付いた時に、改めて自分は何をするべきなのかを考えました。

 

そして出した答えが、

情報を発信する人になるのではなく、情報を受け取り、行動に移す人を増やすということです。

 

報道写真家はもうたくさんのプレーヤーがいます。

その一人になることもひとつの手段だと思いますが、

ある意味プレーヤーがいるならその人たちに任せられるとも言えます。

 

 

どうすれば情報を受け取り、行動する人を増やせるのか?

それに適した手段を探したときに、見つけたのが、「社会起業家」になるという選択でした。

 

 

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社会問題解決が「他人任せ」になってしまう現状

 

情報を受け取り、行動する人を増やす。

すなわちそれは、社会問題解決に関わる人を増やすということです。

 

社会や政治で起きていることを知らない人が多いと、先ほど書きましたが、

実はそれには明確な根拠があります。

 

日本は欧米諸国や韓国と比較をした時に、

選挙やボランティア、寄付などといった社会的な行動をとる人が少ない状況にあります。

 

例えば、選挙の投票率。

 

下のグラフは衆議院選挙における年代別の投票率の推移を示しています。

 

昨年の衆議院議員選挙の投票率は53.68%と、およそ2人に1人しか選挙に行っていない状況にあります。

 

ちなみにこれは戦後2番目に低い数値とされています。

 

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(引用:明るい選挙推進協会 )

 

一方で、欧米諸国はどうでしょうか?

 

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(引用:明るい選挙推進協会  

 

こちらが北欧のスウェーデンとの投票率の比較です。

全年齢の投票率は80%超え。

 

日本と大きく差が開いていることが分かります。

 

また選挙以外の社会的な活動を見ても、

参加する人の割合は少ない状況にあります。

 

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(引用:低下する日本人の政治的・社会的活動意欲とその背景、NHK)

 

 では、日本人が世界的にみて意識が低いのか?というと、

そうは思いません。

 

様々な要因があって、

社会問題解決に関わる人が増えない現状が日本にはあると考えています。

 

社会問題解決を他人任せにしない世界を作る3つの軸

 

社会問題解決に関わる人が増えない要因とはいったい何なのか?

僕はこの問題を大きく3つの軸に分けて、捉えています。

 

一つ目が、「認知」の軸

 

文中でも書きましたが、すべては知ることから始まると考えています。

 

よく日本人は社会に無関心だという人がいますが、

僕はそうは考えていません。

 

本質は無関心なのではなく、そもそも知らないだけ。

社会や政治のことをよく知らない、わからないなど、自分の意見を持っていない人が多いと考えています。

 

要するに、無関心ではなく「未認知」なのです。

 

知らないものに問題意識を持つことはもちろんできません。

 

まずはこの認知の壁を破り、社会に対して自分の意見を持つ人を増やしていく必要があります。

 

そして二つ目が「自分事化」の軸。

 

認知したことのすべてを自分事として捉えるわけではありません。

僕たち人間は関わりがないものに強い関心を持つことはできないと考えています。

 

特に社会問題や政治は、日常の中で関わることが少ないものです。

直接的な関わり、接点を持つことで多くの社会問題を自分事化する必要があります。

 

例えばスタディツアー事業や、教育事業を通して

社会問題と直接関わる機会が提供できるのではないでしょうか?

 

そして最後が「行動」の軸。

 

自分事化をしたからとはいえ、身近に行動先がない状況では、

社会問題解決に関わることは難しいと考えます。

 

主体的にボランティア活動や、市民活動などで社会参加することは素晴らしいことですが、それぞれの生活がある中でそれを強いることは、かなり酷なことではないでしょうか?

 

そもそも、です。

社会問題解決に関わる人が少ないのは、社会システムが悪いという考え方もできるのです。

 

社会問題解決につながる行動がより身近であれば、行動する人はもっと増えていくのではないでしょうか?

 

例えば、選挙に行く人が少なくなってきているのに対して、

主体的に選挙に行く人を増やす人を増やすことも素晴らしいですが、

 

選挙のあり方を考える。つまりは選挙に参加するハードルを下げるという考え方もできるわけです。例えばインターネット投票はその例の一つだと思います。 

 

このような考えで、社会問題解決に関わる方法をより身近にする必要があると考えています。

 

この①認知、②自分事、③行動の3つの軸、それぞれの課題を解決する事業を展開することで、

社会問題解決に関わる人をどんどん増やしていきたいと考えています。

 

事業の目的は「社会問題の解決を他人任せにしない世界」を作ることです。

 

そのための第一歩として年内に、「認知の壁を破り、社会に意見を持つ習慣を作るニュースアプリ」をリリースします。

サービスの詳細については、今後アップしていこうと思っているので、

こうご期待ください。

 

今回はここまで。

 

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廣瀬 智之(ひろせ ともゆき)

社会問題の解決を他人任せにしない世界へ。#新卒で社会起業家 に挑戦中。元開発メディアganas記者。「日本の社会・政治参加意識を高めるメディア事業」立ち上げ中です。

 

私立・公立高校やイベントで講演の依頼をいただいています。

これまでの取材写真や動画を用いて、社会問題、国際理解の講演を承っています。

 

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報道写真家になることをやめました。

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(カンボジア、シェムリアップにて) 

 

たしか大学2年の終わりだったと思う。

 

それは大したキッカケではなくて、

 

友人がある日、「私はフォトジャーナリストになりたいの」と僕に話してくれたこと。

 

フォトジャーナリストなんて仕事知らなかった。

 

これなら、自分にもできるだろうか。

 

当時カンボジアで、タイダイ染めのブランドを立ち上げたけど、

 

全然上手くいかなくて、手元に残ったのは初期投資にかかった12万円の借金。

 

タイダイ染めの時は、やればやるほど違和感を感じていた。

 

僕はこれに一生を捧げられないと。

 

だけど、フォトジャーナリストという仕事を知ったときは、

 

なぜかこれが本当にやりたかったことだと思った。

 

それからはがむしゃらに、毎日バイトして借金を返して。

 

その友人が好きだった報道写真家に会いに行って、

 

取材先を紹介してもらって。

 

ganasという媒体のインターンを通して、学生記者として活動するようになった。

 

「僕、卒業したらフリーのフォトジャーナリストになりたいんです。」

 

編集長をはじめ、周りの友人にはそう話していた。

 

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「お前みたいなカメラをもったやつ、毎週のように来るよ。写真を撮って、話を聞いて帰るんだ。それで?この国の何が変わった?」

 

そんなことを取材地で言われることもあった。

 

ある意味、報道写真家は人の悲しみを撮る仕事。

 

生きていくためには、まず自分の名前を売らなければいけない。

 

気がつけば人の悲しみがある場所を探すようになった。

 

自分が売れるために。

 

写真で生きていくために。

 

だけどこの言葉で改めて気付いた。

 

自分のこの活動で、傷つく人がいると。

 

何してるんだろう。

 

何だこれ。

 

無性に悲しくて、その日は家に帰ってベッドから動けなかった。

 

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それから月日は流れ、僕は報道写真家になるのをやめた。

 

先輩の報道写真展や写真集を見る度、

 

悔しさを感じていた自分。

 

ある日から、先輩の作品を見れなくなった。

 

「俺にだってこれくらい撮れる」。

 

「この人が売れたのは、運がよかったのもあるはずだ。」

 

そんな醜い嫉妬を大先輩の報道写真家にも向けていた。

 

だけど、やってみてわかった。

 

自分にはあんな写真は撮れなかった。

 

というよりは、その場所にすら辿り着けなかった。

 

報道写真は、僕にとって怖いことがたくさんだった。

 

人にカメラを向ける怖さ。

 

治安の悪い場所に行く怖さ。

 

死んで親を悲しませるかもしれないという怖さ。

 

気づけば取材はいつも、

 

そんな怖さとの闘いだった。

 

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あれから2年という月日が経った。

 

僕は今、社会起業家を志している。

 

その理由は?と聞かれたら、

 

改めて自分がやるべきことを考えたときに、

 

それは報道写真家のプレーヤーの一人に加わることではなく、

 

情報を受けとる人たちを増やすことだと気付いたからと答える。

 

それは嘘ではないし、

 

報道という活動を通じて感じたメディアの問題点や、社会への無関心を

 

どうにか解決したいという気持ちは本当にあった。

 

でも心のどこかには、きっと

 

報道の怖さをもう感じたくないという気持ちもあったと思う。

 

僕は自分を傷つけてまで、誰かを救えるほど

強い人間じゃなかった。

 

それを僕は認めたくなかった。

 

だけど、ありのままの自分で生きていきたいから、

 

そんな過去の自分も受け入れてあげたいと思う。

 

それに、挑戦したから分かったことがたくさんあり、

結果それが今の原動力になっている。

 

応援してくれていたみなさん。ごめんなさい。

 

僕は報道写真家にはなれませんでした。

 

だけど、社会問題に苦しむ人なんて無くしたい、

みんなが幸せに生きられる社会にしたいという想いは変わらず、

 

今もそこに向かって走り続けています。

 

手段はかつての頃とは違い、社会起業家になったけど、

あのころと変わらず、応援してください。

 

廣瀬

 

 

ルワンダの大量虐殺跡地に行った僕が、この社会にできること。

2017年11月、僕はルワンダを訪れていた。

 

ルワンダに行った目的は、ひとつ。

 

ジェノサイド(大量虐殺)のあった跡地を訪れるためだ。

 

あの場所に足を運んで、アウトプットをずっとしたかったけど、

言語化するのが難しくて、あの記憶を誰とも共有することなく、頭にしまっていた。

 

それではいけないとわかっているから、今日はあの日感じたことと

今思っていることを書き留めたいと思う。

 

 

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ルワンダで起きた大量虐殺

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www.aboutrwanda.com

 

 

当時ルワンダには、多数派のフツ族(約85%)と、少数派のツチ族(約15%)がいた。

 

事が起きたのは、1994年。

今年24歳になる自分が生まれた年。

 

100日間で、約80万人のツチ族と穏健派のフツ族が虐殺された。

 

両民族には慎重おや皮膚の色に多少の違いがあったものの、目だった差異は見られず、お互いを区別して生きていたわけではなかったと言われている。

 

ではなぜジェノサイドが起きたのか?

簡単に説明をすると、

 

当時ルワンダはベルギーに植民地支配をされており、

植民地を円滑に経営するために、少数派のツチ族を優遇し、フツ族を統治させるいう、

分断統治と呼ばれる手法をとったのがキッカケとされる。

 

これにより、大多数を占めるフツ族の不満の矛先は、中間支配者であるツチ族に向かうという構造だ。

 

ベルギーはフツ族とツチ族をIDカードによって区別し、

すべての首長をツチ族に独占させ、教育や税の面でもツチ族を優遇した。

 

そして、この明確な線引きこそが、最終的にジェノサイドに繋がってしまった。

 

4万5000人が虐殺された場所へ

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daiki55.com

 

そんなジェノサイドの跡地にいつか行きたいと、

大学1年のころから考えていたが、大学4年の時に、ついに現地に足を運ぶことができた。

 

ルワンダの首都、キガリにもジェノサイドのことを知るためのメモリアルはあるが、

今回は南部ムランビにある、技術学校の話をしたい。

 

その技術学校は、一夜にしておよそ4万5000人ものツチ族が虐殺された場所。

今はその悲劇を後世に遺すため、「ムランビ虐殺記念館」というメモリアルとして慰問者を向かい入れている。

 

虐殺が始まった当初、ツチ族は教会へと避難するものが多かったといわれるが、

「丘の上の学校に避難をすればフランス軍の保護が受けられる」

という噂が広がり、6万5000人ものツチ族が学校に避難していた。

 

しかし、ある日フランス軍は学校から撤退。

その後虐殺が行われた。

 

ある者はナタで、ある者は銃で。子どもや女性、老若男女問わずの4万5000人が殺害されたのだ。

 

この学校では、無数の遺体が発見されており、

発見された遺体はミイラ化した状態で、建物内に並べられている。

 

(写真はこちらから確認できます※閲覧注意)Mrambi genocide - Google 検索

 

自分もその建物内に入らせてもらったが、

入った瞬間、強烈なにおいが鼻の奥に突き刺さり、足を止めた。

 

死臭だった。

 

今まで嗅いだことのない臭い。

そして無機質な部屋に、きれいに清掃された遺体が並べられていた。

 

まだ赤ん坊だったり、頭蓋骨が砕かれていたり、手足が切断されていたり。

レイプされて殺されたという、股を開かれた状態の遺体もあった。

 

骸骨に表情はないはずなのに、苦しんで死んでいったのがわかるような

息苦しい表情をしていた。

 

1人の遺体の体に手を触れると、冷たく、さらさらとした粉が手についた。

 

僕の心にあったのは、とてつもない虚無感。

なぜ止められなかったのか。なぜこんなことが起きるのか。

なぜ人が人を殺すのか。

 

考えても考えても、心が晴れることはなく、 

「日本で同じことを二度と絶対に起こさせません。」

慰霊碑に固く誓うことしかできなかった。

 

ジェノサイドはヘイトから始まる

 

そんなルワンダでの記憶は、今もなお強く脳内に焼き付いている。 

 

日本に帰国後、当時の記憶が頻繁に脳内をよぎるようになったのは、

ヘイトスピーチ・差別に関する講義を受けた日からだ。

 

ワンワールド・フェスティバルというイベントに参加をした際に、

ヘイトスピーチを学ぶ ワークショップが企画されていた。

 

差別やヘイトスピーチの問題に関心を持っていたので、

予定にはなかったが参加することにした。

 

その時の講師が言っていたセリフが、ルワンダの記憶を線でつないでくれたのだ。

 

それが、

「ジェノサイドはヘイトから始めるんです。ジェノサイドはもう始まっているんです。」

という言葉。

 

その講師は、「ヘイトのピラミッド」という概念を元に解説をしてくれた。

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 ジェノサイドは、唐突に人間が大量の人間を殺すわけではなく、 すべては偏見から始まるという。

 

そして偏見が言動などによる差別につながり、

差別が、ヘイトスピーチ、ヘイトクライムという暴力や事件へとつながる。

最終的にジェノサイドへとつながるという概念だ。

 

この説明を受けたときに、今の日本社会とルワンダの記憶が、はっきりと結びついた。

 

差別やヘイトスピーチは日本も深刻な社会問題となってきている。

都市部ではヘイトデモが横行し、

TwitterなどのSNSでは、数え切れないほどのヘイトスピーチを目にする。

 

またヘイトスピーチをにとどまらず、

3月には右翼活動家らが、朝鮮総連に向かって発砲するという事件も起きている。

www.jiji.com

 

 

“ジェノサイドはヘイトから始まっている”

 

この言葉と、ルワンダでの記憶を日本社会に置き換えたときに、危機感と恐怖を感じるようになった。

 

日本で同じことを絶対に起こしてはいけない。

そのために自分にできることは何なのか?

 

ヘイトに流れないために、社会への関心を

 

その答えの一つに、今自分が取り組んでいる、

「社会に関心を持つ人を増やす」があると考えている。

 

世間では特に若者が、社会に関心を持たなくなっていると言われている。

 

関心がないという状態は、「その物事に対する善悪を判断する軸がない状態」

だと僕は思う。

 

例えば政治に対して関心がない人は、誰が良い政治家で、誰が悪い政治家なのか。

どれが良い法案で、どれが悪い法案なのか、判断することはできないだろう。

 

そしてその状態は、強い影響力を持つ思想や、社会の風潮になびきやすい。

 

今やSNSを中心に、日本でも「ヘイト」が目につくようになった。

誤った情報をもとに、そうした大きな声に共感してしまう人も少なくないだろう。

 

社会に無関心な人も、無関係に生きることはできない。

 

一人ひとりの力が合わさって社会に大きな影響を与えているのだ。

 

だからこそ、一人ひとりが社会に対して関心を持つ(NOといえる判断軸を持つ)必要があるのだと思う。

 

社会に関心を持つ人を増やすことが、ヘイトスピーチをはじめとする社会の不正義に対して「NO」を示せる社会に繋がると、僕は思う。

 

(了)

 

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廣瀬 智之(ひろせ ともゆき)

社会問題の解決を他人任せにしない世界へ。#新卒で社会起業家 に挑戦中。元開発メディアganas記者。「日本の社会・政治参加意識を高めるメディア事業」立ち上げ中です。

 

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