ポルポト大量虐殺時代に後戻り?日本人の8億円がカンボジアの独裁化を推し進める
日本人からも人気の東南アジアの国、カンボジア。
学生団体でボランティアに行く人もいれば、
アンコールワットに観光に行く人も。
目的は違えど、カンボジアを好きな人たちはたくさんいます。
そんなカンボジアで今、強権的な独裁化が進んでいることをご存知でしょうか?
圧勝した政権与党の裏側にあるもの
カンボジアで今年7月29日に実施された下院選挙で、
1985年以来政権を握るフンセン首相が率いる人民党が全125議席を独占し圧勝しました。
投票率は83%。
高い投票率の下で実施された今回の選挙は民意を表していると、フンセン首相は主張していますが、
今回の選挙の公正性に欧米諸国が疑問を投げかけています。
それもそのはずで、選挙を前にして最大野党であった救国党が最高裁によって解党されたのです。
解党された最大野党
救国党は2013年の下院選で4割りを超える議席を獲得し、
過半数に迫る躍進を見せていました。
しかしながらフンセン首相が最高裁に、
「政府転覆計画に関与した」と訴え、それが認められたことによって、
救国党の解党が命じられました。
また党首であったケム・ソカ党首は、反逆罪で逮捕されました。
残る野党は与党と手を組むものか、支持が得られない小規模な党しかなく、
国民は与党に対する選択肢を失ったことになります。
引用:https://www.huffingtonpost.jp
ジャーナリズムへの弾圧
さらに与党が実施したのは、野党の解党だけではありません。
カンボジアにジャーナリズムを導いたとされる最も有名な英字新聞「Cambodia Daily」が、
約6億9,000万円の未払い税の支払いを政権に突き付けられ、廃刊に追い込まれました。
Cambodia Dailyはこれまでに政権に不都合な現場の取材を続け、それを発表してきました。
よって、これまでも政権に批判されてきましたが、
選挙に向けて、ついに廃刊に追い詰められてしまったのです。
さらにメディアへの弾圧はCambodia Dailyにとどまらず、
Radio Free Asiaというアメリカ資本のラジオ局も、
プノンペン支局を閉鎖に追い込まれました。
そしてRadio Free Asiaの報道を受けて流していた独立系のラジオ局15局以上が閉鎖に追い込まれる事態となっています。
市民も弾圧の対象に
2016年、政治評論家として有名であった、ケム・レイさんが暗殺される事件が起きました。
ケム・レイさんは政権が行う不正や弾圧の現状を発信し続けていました。
まさにカンボジア市民の声を代弁してくれる存在を失う形になってしまったのです。
引用:https://asabe.jp/cambodia/cbdemocracy.htm
大量虐殺からの復興、作り上げられてきた「合法」な独裁体制
国民の3分の1が虐殺されたポルポト政権時代
カンボジアといえば、大量虐殺があったことでも知られています。
その時カンボジアのトップにいたのが、
ポル・ポトです。
ポル・ポトは原子共産主義という思想を持ち、
階級や格差の愛社会を実現するために、
原始時代のような社会を目指していました。
知識は格差を生むとされ、
多くの知識人は殺害されてしまいました。
知識人は徐々にエスカレート。
最終的には国民の3分の1にあたる200万人が虐殺されたとされています。
(カンボジアにはいまだ多くの地雷や不発弾が埋まっている)
詳しくはこちら
合法的に国を支配するための32人の幹部
国の基盤が壊されてしまったカンボジア。
ポルポト政権の後に政権のトップに立ったのが今のフンセン政権です。
フンセン首相が率いる人民党は32人の最高幹部といわれるメンバーがいます。
その幹部たちが、司法、警察、軍などの
主要機関のトップに立っています。
そのため人民党に有利な判決が出る状態を、
「合法的に」作り上げてきたということです。
こうした背景が、選挙での一連の出来事に関係しているとされています。
カンボジア選挙を支援する国、日本
8億円の無償資金協力
こうした状況を受け、欧米諸国は選挙に必要な資金や物資を提供する選挙支援停止を決定しました。
しかし日本は選挙支援をやめずに、8億円の無償資金協力を実施しました。
また日本製の投票箱を約1万1000個提供し、設置や回収に必要な車両も40台手配しました。
カンボジアの民意が反映されていないとわかっている選挙を、
私たちの国は支援したのです。
このことは、国際的にも問題視され、
ニューヨークの国連本部近くでカンボジア救国党の支持者らが、
日本政府に選挙支援をやめるようにデモをしました。
日本人のあなたができたこと
カンボジアがまた独裁国家体制に戻らないために、
私たちにできることは何だったのでしょうか?
こういった社会や政治に「もやもや」や「むかむか」を感じたときは、ぜひオンライン署名サイトchange.orgをのぞいてみてください。
今回の一件も、政府に届けるための署名を集めていました。
もう終了してしまったのが悔やまれますが、
今後とも日本政府はカンボジアの選挙支援を続けていくでしょう。
私たちが知らないところで、日本のお金はあらゆるところに使われています。
政府が何をしているのか、そして何をしようとしているのかを知り、
時には声を上げていくことが民主主義国家では必要です。
今回はここまで。
廣瀬 智之(ひろせ ともゆき)
社会問題の解決を他人任せにしない世界へ。#新卒で社会起業家 に挑戦中。元開発メディアganas記者。「日本の社会・政治参加意識を高めるメディア事業」立ち上げ中です。
私立・公立高校やイベントで講演の依頼をいただいています。
これまでの取材写真や動画を用いて、社会問題、国際理解の講演を承っています。
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